研究概要 |
金およびパラジウムを核とする新規ターチオフェン修飾金属ナノクラスター(TP-Au、TP-Pd)は、チオール誘導体存在下、それぞれ3価の金イオン、2価のパラジウムイオンを還元することにより合成した。透過型電子顕微鏡(TEM)観察より、得られた各金属ナノクラスターは、粒子径が約1.8nm(TP-Au)および1.9nm(TP-Pd)の分散性に優れた粒子であることが分かった。電気化学的性質については、サイクリックボルタンメトリーを用いて調べた。その結果、0.74V(TP-Au)および0.79V(TP-Pd)にターチオフェン骨格に基づく不可逆な酸化ピークが観測され、多重走査によって著しいピーク電流値の増大が確認されたことから、多重電極酸化によって容易にターチオフェンが重合し、電極上に対応する導電性ナノクラスター重合膜を形成することが分かった。さらに、これら異種金属ナノクラスター(TP-Au,TP-Pd)は、0.1 M Bu_4NPF_6_CH_2Cl2>中で混合し、多重電極酸化を行うだけで、容易に電解共重合することが可能であり、電極上に生成したナノクラスター重合膜のXPSスペクトルから、金4f軌道に基づくピークが83.7eVと87.3eV、パラジウム3d軌道に基づくピークが336.6eVと342.0eVに観測され、金およびパラジウムを有する全く新しい異種金属ハイブリッドポリマーの創製が可能であることが判明した。TP-AuとC_<60>-SHとのリガンド交換反応によりターチオフェン-C_<60>フラーレン混合金ナノクラスター(C_<60>TP-Au)を合成した。その結果、得られたC_<60>TP-Auは、粒子径が約1.8nmの分散性に優れた均一な粒子であり、各種スペクトル解析より、新規有機-無機ナノ複合クラスターであるC_<60>-TPの構造を確認した。電解重合を用いた修飾電極界面の構築を試みたところ、C_<60>-TPの電解重合より生成したナノクラスター重合膜からは、C_<60>フラーレンユニットに基づく非常に明瞭で可逆な還元・酸化応答(-0.98V,-1.30V vs.Ag/0.1 M AgNO_3)を観測することができた。チオフェン-C_<60>フラーレン系の電解重合膜に関する報告の中で、このように可逆性の高い電気化学応答を示したものはなく、金ナノクラスターC_<60>TP-Au重合膜によってこのような結果が得られたことは非常に興味深い。
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