研究概要 |
多次元最適化手法を用い、磁化率の温度変化とNMR常磁性シフトを解析することにより同一構造を持つ一連のf^8〜f^<13>希土類錯体群の基底多重項副準位構造と配位子場パラメータを決定する手法を用い、次に示す錯体群の電子構造と静的・動的磁性について研究を行った。 1 三回対称軸を持つ典型的な希土類錯体であるトリスジピコリナト希土類錯体[Ln(dipic)_3]^<3->の配位子場パラメータ、基底多重項副準位構造を決定した。えられた副準位構造は、以前に決定した4回対称軸を持つフタロシアニン二層型錯体のそれと逆の特徴を持っており、各準位のJz値の大小とエネルギーの関係がそれぞれの希土類について、逆転していることが明らかになった。この成果は2003年錯体化学討論会にて発表した。 2 Tb化イオンは二枚のフタロシアニン環により作られる配位子場に置かれることきわめて長い磁気緩和時間を持つことを以前に明らかにした。このTbイオンが二つ近距離に存在するとき、その動的磁性はどうなるか明らかにするために、二核Tbフタロシアニン三層型錯体の動的磁性について研究した。[Tb, Tb]では[Tb, Y]と[Y, Tb]にくらべて交流磁化率虚数成分が極大値をとる温度が上昇することがわかった。基底多重項副準位構造をもとに、変動磁場に対する応答のシミュレーションを行った。これらの成果は2003年錯体化学討論会、2004年化学会年会にて発表した。 3 単核Tbフタロシアニン二層型錯体の持つきわめて長い磁気緩和時間が配位子上のπ不対電子によってどのように変化するかについて明らかにするために、πラジカル形錯体の動的磁性について研究した。π閉殻型錯体では1000Hzの交流磁場に対して40Kにて交流磁化率虚数成分が極大値をとっていたが、πラジカル型では50Kに上昇することがわかった。これらの成果は2004年化学会年会にて発表した。
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