研究概要 |
拡張π-電子系としての多硫黄ジチオレート配位子を含んだ多様な金属錯体を合成し、その酸化によって新しい電導体を得た。とくに常磁性金属イオンを含む錯体については磁性を明らかにした。 ○C_3S_5あるいはC_8H_4S_8配位子を有するシクロペンタジエニルロジウム(III)およびイリジウム(III)錯体およびペンタメチルシクロペンタジエニル-関連錯体を合成し、臭素あるいはヨウ素によるそれらの酸化体を得た。ジチオレート配位子中心に起こる酸化過程を明らかにし、また酸化体の構造と性状をX線結晶解析あるいはESRスペクトルから明らかにし、さらに電導度をしらべた。 ○マンガン(II)イオンを含む[Mn(C_8H_4S_8)_2]^<2->錯体を合成し、磁性測定からMn(II)イオンのS=5/2の状態にあり、錯体アニオンは固体状態で四面体構造であることを明らかにした。ヨウ素との反応によって得られた[Mn(C_8H_4S_8)_2]^0では、Mn(III)ならびにジチオレート配位子中心の酸化が生じてS=3/2の状態にある。また、固体状態では錯体分子間に強い反強磁性相互作用(Θ=-60K)を示すとともに、3.0x10^<-2>Scm^<-1>(室温、粉末加圧成型試料)の高い電導度を示した。 ○分極性[M(ppy)(C_3S_5あるいはC_8H_4S_8)]^<n->(M=Pd(II),Pt(II)およびAu(III);ppy^-=C-脱水素化-2-フェニルピリジン;n=1,2)錯体を合成した。ヨウ素あるいはTCNQで酸化して得られた酸化体は高い電導度を示し、電解酸化で得られた[Au(ppy)-(C_8H_4S_8)]_2[PF_6]結晶は、室温付近で金属的挙動を示した。平面構造をとるC_8H_4S_8配位子間での硫黄原子を介する二次元的相互作用による電導経路が形成される。
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