研究概要 |
シリルロジウムポルフィリン,シリル及びスタンニルイリジウムポルフィリンを2つの方法で合成した。得られた化合物についてIr-Si, Ir-Sn, Rh-Si距離と共有結合半径の和との比較し,ケイ素に結合した置換基によるRh-Si結合への影響を考察した。 まずTHF中、金属カリウム還元でイリジウムポルフィリンアニオンを発生,シリルクロリド,スタンニルクロリドと反応させる方法で,一連のイリジウム化合物を収率30%前後で得た。この方法をシリルロジウムポルフィリンに適用したが,ケイ素に結合するフェニル基が多くなると収率が低下し,10%以下となった。そこでシリルカリウムとロジウムポルフィリンの反応を試み,SiMe_2PhCl, SiMePh_2Clで約10%の収率で目的化合物を得た。熱安定性を調べるため,トルエン中数時間加熱還流したところ,Ir(ttp)SnMe_3 2a, Ir(ttp)SnPh_3 2dは一部分解,Ir(ttp)SiMe_3 1a, Rh(ttp)SiMe_2 Ph3b, Rh(ttp)SiMePh_2 3cについてはほとんど分解は見られなかった。 上記化合物について結晶構造を明らかにした。既知のアルキル金属ポルフィリン中Ir-C, Rh-C距離は共有結合半径の和と同程度であり,単結合と考えられるが,Ir-Sn, Ir-Si, Rh-Si距離はそれぞれの共有結合半径の和よりもやや短いことがわかった。このことはIr5d, Rh4d軌道電子のSn5d, Si3d軌道への逆供与によるdπ-dπ相互作用に起因すると考えられる。UV-visスペクトルにおけるSoret帯吸収のε_<max>が1a,3b,3cはいずれも[Ir(ttp)CH_3],[Rh(ttp)CH_3]に比べて約1.5倍になっている,2a,2dのSoret帯は双こぶに分裂していることからも,この相互作用の存在が裏付けられた。
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