研究概要 |
中性子捕獲反応^<56>Fe(n,γ)^<57>Feとそれに続くγ線放出による核周辺の化学変化、すなわち核変換に伴う化学的後遺効果をインビーム発光^<57>Feメスバウアー分光法で研究した。極微量物質のキャラクタリゼーションとして有用であり、通常の方法では生成できないような極端条件、たとえば、高エネルギー状態からの急速緩和、低温、高圧、高磁場等での物質の性質や挙動を非破壊で測定できるという特長がある。また、中性子照射場下での材料の非破壊分析等様々な応用が期待される。 中性子ビーム実験には日本原子力研究所東海研究所JRR-3Mに設置されている即発γ線分析装置を利用した。メスバウアー効果の測定は、室温で平行平板電子雪崩検出器(PPAC)を利用して行った。この実験の要となる検出器PPACについては、本実験に適合するよう以下の2つの改良を行った。(1)カウンターガスを従来のイソブタンからパーフルオロプロパンに変えた。(2)中性子捕獲反応後の即発高エネルギーγ線による検出器内部の電子発生に起因するノイズの低減化対策のために検出器内部の金属部分にはマニキュアコーテイングを行った。これらの改良後、オフビームでの種々の予備テストを重ねた後、ステンレススティール、金属鉄を試料ターゲットとして、インビームメスバウアースペクトルを測定した。比較的短い測定時間で、S/N比として1.5倍の改善を達成した。今後は化学的に興味ある系に進むことになる。試料候補として検討されているニトロプルシドナトリウム(Na_2[Fe(CN)_5NO].2H_2O)、パイライト(cubic-FeS_2)、マルカサイト(rhombic-FeS_2)などの^<57>Fe吸収メスバウアースペクトルの温度依存性を、基礎データとして詳細に測定した。これらの化合物が本研究の系として有望であることが示された。
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