研究概要 |
ジベンゾ-18-クラウン-6及びジベンゾ-24-クラウン-8(L)とアルカリ金属イオン(M^+:Na^+,K^+,Rb^+,Cs^+)との1:1錯体について,水中での錯生成定数をキャピラリー電気泳動法により決定した。また,同じ錯体について,ニトロメタン中での錯生成定数を電気伝導度法により決定した。従来,クラウンエーテルによる錯化の選択性(イオン選択性)は,"イオンのサイズが配位子の空孔サイズに近いほど安定な錯体が生成する"というサイズ適合説によって説明され,溶媒の影響はほとんど考慮されていなかった。実際,多くの極性非水溶媒(アセトニトリル,メタノールなど)や水中では,しばしばサイズ適合説に従う選択性が見られた。しかし,溶媒和能力の非常に弱いニトロメタン中では,いずれのLについても,Cs^+<Rb^+<K^+<Na^+の順にM^+のサイズが小さいほど錯体が安定化し,サイズ適合説では説明できない結果が得られた。これより,M^+とLとの直接の相互作用(真空中での相互作用)はM^+の表面電荷密度に支配されていること,また選択性に対する溶媒効果が大きいことが明らかになった。さらに,各化学種の溶質-溶媒間相互作用を量的に評価するために,ニトロメタンから他の極性溶媒(S:アセトニトリル,炭酸プロピレン,メタノール,N,N-ジメチルホルムアミド,水)への移行活量係数(^sγ^<NM>)を求めた。その値から,錯体中のM^+はLによって溶媒から効果的に遮蔽されており,その遮蔽はDB18C6よりも大きくて柔軟な構造を持つDB24C8のほうがより効果的であることが分かった。以上より,イオン選択性に及ぼす溶媒の効果は,主として未錯化のM^+の溶媒和に起因することが示された。
|