1.触媒活性状態の特定 o-フェニレンジアミン存在下、銅イオンを触媒して溶存酸素によりアスコルビン酸を酸化させる反応を利用して銅を吸光光度定量する方法を検討した。シュウ酸の添加濃度と反応性銅(定量できる銅)の存在率との関係を調べ、平衡定数から算出した種々の銅(II)シュウ酸錯体の存在率と比較した結果、反応性銅はCu^<2+>とCu^<II>L_n(Lが単座配位子の場合はn≦2、二座配位子の場合はn=1)であることが明らかになった。 2.状態分析システムの構築 上記の反応を利用して銅を流れ分析する場合、流路であるテフロン細管の内壁に銅が吸着し損失することが問題となったが、各反応試薬溶液の流路を独立させ、キャリヤー溶液にアルミニウムを添加することによって抑制できた。本測定システムにより、分析時間10分、定量誤差1ng/mlで銅が定量できるようになった。このシステムに、フローインジェクション方式でフミン物質を同時蛍光測定する機能を組み込んだ。フミン物質は、フミン酸として定量誤差10ng/ml、200ng/mlまで定量できた。 3.実際試料への応用 本研究では、銅全量の測定システムも組み合わせる予定であったが、フミン物質を測定した流れを原子吸光分析装置などに導けば測定可能と思われたので、この段階で実際試料へ応用し、本システムの有用性を確かめた。擬似河川水(Cu^-フミン酸-Fe-Si溶液)を試料として、アルミニウムを添加したときの銅とフミン酸の濃度の経時変化を本分析システムで調べ、それらの状態分析を試みた。アルミニウムの添加開始から反応性銅とフミン酸の濃度は減少し、鉄(アルミニウム)フミン酸の凝集によって凝集体内部のフミン酸からは蛍光が測定できなくなり、同時に銅も内部に取り込まれ反応性を失うことが示唆された。アルミニウムイオンと大過剰のフッ化物イオンを添加した場合についても同様の状態分析を試みた。
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