ペンタフルオロピリジンによるフェノール類の誘導体化を2つのタイプの固相で検討を行なった。 (1)強アニオン交換固相抽出 アルカリ性にした水試料をシリカおよびポリマーを母体とした強アニオン固相に通水することにより、吸着の検討を行った。シリカ母体の固相はアルカリに不安定なため、フェノレートイオンがほとんど吸着されなかった。一方、ポリマー母体の強アニオン固相(Waters社製、OASISMAX)には効率よく吸着された。誘導体化は、ペンタフルオロピリジンのヘキサン溶液(10%、2ml)を固相に10分保持し反応させることにより、定量的に進んだ。OASISMAXを用いた抽出では、吸着にはイオン性相互作用のみならず、疎水性相互作用も重要であることがわかった。 共存するマトリックスの影響を検討するため、中性物質とアニオン性物質(カルボン酸類)の共存下に誘導体化を行ったが、反応は全く影響を受けなかった。中性物質はアセトンを流すことにより除去され、カルボン酸類は誘導体化されず固相に残ったままであった。検出限界は100mlの水試料を用いた場合、アルキルフェノール類で0.88-8.5ng/lと、二相系の結果(6.9-85ng/l)に比べて良好であった。河川水からの回収も非常に水溶性の高いメトキシフェノールを除いて、良好な回収率が得られた。河川水からは、ブチル、オクチル、ノニルフェノールが検出された。 (2)逆相固相を用いるイオン対固相抽出 C_<18>固相に予めイオン対試薬を吸着させることにより、上記強アニオン交換固相とほぼ同等の結果を得ることができた。イオン対試薬と固相は、臭化テトラヘキシルアンモニウムとC_<18>を用いた場合に、フェノレートイオンを最も効率よく吸着させることができた。ヘキシル以上のアルキル基では、水溶性に乏しく取り扱いが困難であった。また、固相にペンタフルオロピリジンのアセトン溶液(0.1%、2ml)を通すだけで、溶出と誘導体化が同時に進み誘導体が定量的に回収できた。河川水での分析においても良好な結果が得られ、本法の有用性が確認された。
|