ナノ化学はナノ科学の領域を含み表面科学および微細孔における化学へと発展している。ピコグラム量の超微量元素を黒鉛表面に分散後原子蒸気を発生させる黒鉛炉原子吸光法は、表面科学と関連深い。本年度は、黒鉛炉原子吸光システムを活用し、ナノからピコグラムの超微量元素の原子化機構および分析技術の発展を目的に研究を行った。 超微量元素は、黒鉛表面において単原子分散状態で分布する。しかし、金、銀および銅などある特別な元素において、黒鉛表面で2次元状態の平面クラスターから3次元状態の立体的なクラスターを形成する場合がある。原子化中間体の存在状態と原子化の活性化エネルギーは、原子吸光シグナルに基づいた等速昇温過程の速度論的解析から求められた。黒鉛表面との原子レベルの相互作用の強さは、原子の熱脱離のエンタルピー変化に反映され、これは原子の熱脱離(原子化)の活性化エネルギーに等しい。金の原子化の活性化エネルギーと金原子の単原子分散の担体となる炭素材料表面の特性との相関性を明らかにした。金原子は、ファンデルワールス力で炭素表面に吸着する。その吸着面の立体的な凹凸状態によって吸着力の作用する有効表面積が変化する。黒鉛炉内でアスコルピン酸から生成した活性炭の表面構造をその熱処理温度によって制御できる。表面状態を制御された活性炭上に分散した金原子の活性化エネルギーと比較したところ、表面の原子サイズの凹凸状態を示す表面フラクタル次元との間で直線関係が存在することを解明し、これを利用して炭素材料の表面の幾何学的変化を計測することが3分以内で可能となることを示唆する知見が得られた。 黒鉛表面の幾何学的変化が、分析試料溶液の分散挙動に重要な影響を及ぼし高精度な大容量導入分析が理論的に正しく行われていることを解明、環境水中カドミウムの分析に応用しppt分析が可能となった。
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