ボロン酸と糖質が容易にエステルを生成することを利用した分離材料は、生体試料からのグリコヘモクロビンの分離や核酸の分離などに利用されてきた。しかし担体として用いるシリカゲルでは使用可能なpH範囲が限定される、ポリマーゲルではその単分散性の悪さから高い分離脳が得られないなどの問題点がある。本研究では、シリカゲルを鋳型とする方法でボロン酸結合型単分散コポリマーゲルを合成し、複合糖質を試料に用いて、HPLC充填剤および固相抽出分離剤としての有効性を検討した。 すなわち、細孔径100Åで、粒径5μmおよび20μmのシリカゲルをシリル化した後、これを鋳型に用い、スチレン、ジビニルベンゼン、過酸化ベンゾイルから2種の単分散コポリマーゲルを合成した。得られたコポリマーゲルの単分散性は電子顕微鏡および光学顕微鏡観察によって確認した。コポリマーゲルに臭素化、リチオ化、およびホウ酸トリメチルとの反応を行い、ボロン酸結合型コポリマーゲルを合成した。ホウ素の元素分析値から求めたボロン酸の担持率は、両者でおよそ0.5mmol/gであった。粒径5μmの充填剤は25cm×4.6mm I.D.のステンレス製カラムに充填し、気化光錯乱検出器を用いて、D-アルドペントースおよびD-アルドヘキソースの全12種を分析した。その結果、リボース、タロースおよびイドースが強く保持された。これらの糖はいずれも水溶液中でフラノース構造をとりやすく、ボロン酸とのエステル生成に、フラノース構造が関与していることが強く示唆された。また、粒径20μmの重点型を用いてグルコース、タロースおよび糖脂質のガングリオシドG_<MI>を試料とする固相抽出分離を行ったが、いずれも保持されなかった。固相抽出に用いるには、ボロン酸基の担持率を増大させることが必要であると考えられる。
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