研究概要 |
サイクリックフローインジェクション分析が可能な反応系について探索した。結果として1,10-フェナントロリンを利用し、化学発光を検出することにより、Fe(III)の定量が可能であることを見出した。 発光原理は触媒作用を示すFe(III)の存在下で過酸化水素により生成するラジカルが1,10-フェナントロリンを攻撃し、ジオキセタンを生成発光する。ラジカルはNBT法により、スーパーオキシドアニオンラジカルであることが確認された。Fe(III)は触媒作用を示すため、サイクリック分析に適用するばあい、ベースラインの増大をもたらし適用困難になる。そこで、鉄イオンの触媒作用を抑え、一回の酸化還元反応で生じるラジカルを利用する最適条件を求めた。反応温度はベースラインの安定性から、0℃が選定された。得られた検量線は広い範囲で定量可能な再現性に優れるものであった。この方法は廃液をださず100回の定量にも十分耐える方法であった。しかし、触媒作用を抑制したために、感度は低下した。これを補うために濃縮効率に優れる固相抽出法を導入した。これはテフロンチューブの内表面に正の電荷を有する金属イオンが吸着するのを利用するもので微量のエタノールで溶出の容易な方法である。開発された方法により、飲料水中の鉄が定量され、再現性、正確さに優れた結果が得られた。 確立された定量条件は次のようである。循環使用する試薬溶液は150ml(phen:6.0×10^<-5>M),H_2O_2:12%,試料溶液pH:7.5,流量:2.3ml/minである。濃縮に使用する試料溶液14ml(50ppb,Fe)に対し、50回の繰り返し定量が可能であると確認された。
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