研究概要 |
ホルムアルデヒド放散量の少ない建材として木材が見直されているが、木材抽出成分の沸点は200℃以下のものが多いことから全体としてのVOC放散量は少なくない。また木質系収蔵庫では使用される米スギから揮発する酸性物質が文化財に影響を与えるなど解明すべき点も多く残されている。これまでに建材メーカーや施工業者が適切な建材を簡易かつ迅速に選定するための測定法を確立しGCとTGにより2時間程度で建材中のVOC評価が行えることを報告してきた。昨年度は木材の前処理と測定部位を固定することで測定法の精度向上をはかった。今年度は引き続き、室内で発生する悪臭物質や芳香剤成分と木材及び木材(廃材)を原料とするエコマテリアルとして期待される新素材である木材製活性炭、ウッドセラミックス(WC)との相互作用を検討した。木材製の活性炭,複合材料であるWCについての基礎検討も行った。 はじめにベンゼン及びトルエンを取り上げ、粒径の異なる3種のスギWCとそれぞれバイアルに密閉し、1週間40℃に保持後、110℃に1時間保持し、気相を直接GC測定した。その結果、粒径の大きい順に吸着量が多いことがわかった。この結果はベンゼンとWCをバイアルに密閉直後に110℃に1時間保持し、気相を直接GC測定した結果と同様であった。吸着後試料のTG測定結果と合わせ、これまでの測定法が木材、木炭及びWCの悪臭物質や香気性物質に対する吸着特性評価として有効であることがわかった。また木炭及びWCでは悪臭物質や香気性物質に対する吸着特性が原料である木材に依存することが明らかとなった。さらに香気性物質と悪臭物質を比較すると、吸着量は木炭、WC共に悪臭物質の方が多いことがわかった。木炭、WCの吸着前後の固体NMR及びX線回折、低温DSCの検討も開始した。引き続き悪臭物質や木材の前処理に機能水の適用を検討中である。他の多孔質材料との比較も開始した。
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