研究概要 |
平成16年度では、C^<sp2>-to-0シリル転位を利用する有機金属活性種の調整と有機合成への応用について研究を行った。転位が進行しやすいトリフェニルシリル基をもつβ-シリルアリルアルコール類に銅(I)t^-ブトキシドを作用させ銅アルコキシドに変換すると、ケイ素原子の1,3転位が進行しビニル銅が生成した。これらの有機銅活性種は様々なハロゲン化アリルと反応し、アリル化生成物を与えた。ハロゲン化アリルを加えずに、同様の転位反応を行うと、Peterson脱離が進行し、アレンが収率よく生成すること初めて見出した。リチウムt^-ブトキシドを用いた場合これらの反応は進行せず、ケイ素の転位生成物が得られたことから、転位によって生成するビニル銅活性種のプロトン化に対する高い安定性が、引き続くアリルかおよび脱離反応にとって重要であることが明らかとなった。さらに、トリメチルシリル置換体についても同様の反応を検討したが、トリフェニルシリル体と比べてアリル化およびPeterson脱離が進行しにくいことから、本転位反応にケイ素原子上の置換基が大きな影響を及ぼすことが判った。一方、Peterson脱離はついては、プロトン源が存在しない条件では、リチウムアルコキシドからでも進行することを明らかにし、その結果に基づいてα-シリルビニルリチウムとアルデヒドとの反応による一段階で簡便なアレンの合成法を開発した。 α-シリルα,β-不飽和ケトンあるいはアシルシランと銅(I)t^-ブトキシドとの反応で生じる銅エノラートへのケイ素原子の転位反応も進行することを見出し、この転位反応が様々な基質で進行することを確かめた。α-シリルα,β-不飽和ケトンとの反応では引き続くハロゲン化アリルの反応により不飽和ケトンのビニル炭素への置換基導入方を開発した。
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