研究概要 |
α位にメチル基あるいはアリール基を持つ2-イソシアノスチレン誘導体と各種親電子反応剤との反応で、2位に各種置換基を持ったキノリン誘導体を合成できることを見い出した。まず、2-イソシアノスチレン誘導体とアルデヒドを、触媒量の三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯塩で処理すると、2-(1-ヒドロキシアルキル)キノリン誘導体が好収率で得られた。アルデヒドの代わりに、アセトアルデヒドジエチルアセタールまたはフェニルオキシランを用い、同触媒存在下で同様に反応を行うと、2位にそれぞれ、1-エトキシエチル基または2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル基を持つキノリン誘導体が得られた。2-イソシアノスチレン誘導体とN,N-ジメチルイミニウム塩との反応は触媒を用いずとも進行し、2-(1-ジメチルアミノアルキル)キノリン誘導体が得られた。いずれの反応も、イソニトリルの炭素が親電子剤あるいは触媒により活性化された親電子剤を攻撃して、発生した炭素カチオン中心と、スチレンのβ-炭素原子が結合し環化するものと考えられる。 次に、2-(2-メトキシエテニル)ベンゾニトリル誘導体と各種求核反応剤との反応により、イソキノリン誘導体が合成できることを見い出した。2-(2-メトキシエテニル)ベンゾニトリル誘導体をアルキル(またはアリール)リチウムと反応させると、1-アルキル(またはアリール)イソキノリン誘導体が良好な収率で得られた。2-(2-メトキシエテニル)ベンゾニトリル誘導体とリチウムジアルキルアミドとの反応では、N,N-ジアルキルイソキノリン-1-アミン誘導体が生成した。いずれの場合も、求核剤がニトリル炭素を攻撃することにより発生した窒素アニオンが、メトキシエテニル基のα位に付加して、ベンジルアニオンとなり、最後にメトキシドが脱離し、イソキノリン骨格が生成するものと考えられる。
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