研究課題
疎水性の有機架橋剤を結合させた多孔質セラミックスToyonite 200Mにリパーゼを固定化すると耐熱性が高くなるという知見に基づいて、リパーゼ変異体を固定化し、そのエナンチオ選択的アシル化反応を実施した。その際、メカニズムに基づいたエナンチオ選択性の人為的制御がどの程度可能かを調査した。その結果、活性部位近傍の1アミノ酸を別のアミノ酸で置換することにより、エナンチオ選択性は予想どおりの変化を示した。エナンチオ選択性が上がると予測される場合には上がり、低下すると予測される場合には低下した。メカニズムに基づいたこのような顕著なエナンチオ選択性の制御は、前例がない。固定化リパーゼを用いた2級アルコールの絶対配置決定法を開発することに成功した。異なる置換基を持つ2種類の1-置換エタノールに対するエナンチオ選択性(E値)を測定し、それらの置換基を両側に併せ持つ別の2級アルコールに対するE値と絶対配置を予測・決定した。その結果、20例中19例に対して予測と実験結果が一致し定量的にも良好な相関を示した。両側に嵩高い置換基をもつ2級アルコールは通常、反応性が非常に低いが、高活性な固定化リパーゼは低反応性基質に対しても充分な反応性を示した。遺伝子組換え大腸菌を用いて取得したカルボニル還元酵素を多孔質セラミックスに固定化し、それを用いて緩衝溶液中にて不斉還元反応を実施したが、とくに耐熱性や触媒活性に変化は認められなかった。むしろ、この場合は、大腸菌中でカルボニル還元酵素と補酵素再生用酵素(グルコース脱水素酵素)の遺伝子を共発現させて、全細胞系で不斉還元する方がはるかに簡便かつ効率よく光学活性アルコールを合成できることが分かった。16種類のケトンを還元したところ、全ての場合で高エナンチオ選択的不斉還元反応が進行し、8例において98%ee以上の光学純度のアルコール体を得ることができた。
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The Journal of Organic Chemistry 70・4
ページ: 1369-1375
Tetrahedron : Asymmetry 15・12
ページ: 1929-1932
Tetrahedron : Asymmetry (印刷中)