研究課題
基盤研究(C)
多孔質セラミックスToyonite 200Mに固定化したリパーゼを用いて1,1-ジフェニル-2-プロパノールに対して高温下で反応させた。120℃でも反応が進行し光学的に純粋なエステル生成物を与えた。セライト固定リパーゼを用いた場合は100℃ですら全く反応しなかった。超臨界二酸化炭素中でも温度効果を調査したところ、80℃で変換率42%、E値211を得た。ポルフィリンを置換基として持つ2級アルコールに対しては60℃で最も効率よく反応し、得られたエステル並びにアルコールの光学純度は共に100%であった。リパーゼ変異体を多孔質セラミックスに固定化し、そのエナンチオ選択的アシル化を実施した。その際、メカニズムに基づいたエナンチオ選択性の人為的制御がどの程度可能かを調査した。その結果、活性部位近傍の1アミノ酸を別のアミノ酸で置換することにより、エナンチオ選択性は予想どおりの変化を示した。熱力学パラメータを算出したところ、エンタルピー駆動型でエナンチオ選択性が変化していることが明らかになった。固定化リパーゼを用いた2級アルコールの絶対配置決定法を開発した。異なる置換基を持つ2種類の1-置換エタノールに対するエナンチオ選択性(E値)を測定し、それらの置換基を両側に併せ持つ2級アルコールに対するE値と絶対配置を予測・決定した。20例中19例に対して予測と実験結果が一致し定量的にも良好な相関を示した。組換え大腸菌を用いて取得したカルボニル還元酵素を多孔質セラミックスに固定化し、それを用いて不斉還元を実施したが特に変化は認められなかった。むしろ、大腸菌中でカルボニル還元酵素と補酵素再生用酵素の遺伝子を共発現させて、全細胞系で反応させる方が簡便かつ効率よく光学活性アルコールを合成できた。16種類のケトンを還元したところ高エナンチオ選択的不斉還元反応が進行し、8例において98%ee以上の純度でアルコール体を与えた。
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