平成15、16年度の本研究課題の研究により、セレンを触媒量加え、ジアルキルジスルフィドと一酸化炭素とを強塩基であるDBU共存下反応を行うと、形式上ジアルキルジスルフィドのイオウ-イオウ結合間に一酸化炭素が導入されたジアルキルジチオカーボネートが得られるとの結果を得た。そこで本年度は、この反応の一般性に関する知見を得る目的で、様々なジアルキルならびにジアリールジスルフィドと一酸化炭素とを強塩基であるDBU共存下で反応を行った。その結果、直鎖のアルキル基を持つジアルキルジスルフィドでは効率良く反応が進行し、対応するジアルキルジチオカーボネートが収率良く得られるとの結果を得た。しかし枝分かれしたアルキル基を持つジアルキルジスルフィドでは、立体的な込み合いが大きくなるに従い収率が低下し、特に、第三級のアルキル基を有するジ(t-ブチル)ジスルフィドではジ(t-ブチル)ジチオカーボネートは全く得られなかった。また、ジアリールジスルフィドと一酸化炭素との反応を行ったところ、イオウ-イオウ結合の解裂したチオールは生成したが、ジアリールジチオカーボネートは全く生成しなかった。次に、この反応過程に関する知見を得るため様々な検討を行ったところ、この反応が平衡反応であること、またこの反応の開始段階は、ジスルフィドのイオウーイオウ結合のDBUによる解裂で生成したチオレートアニオンのセレン化カルボニルへの求核攻撃であり、またそれらチオレートアニオンの求核性が生成物の収率に大きな影響を与えていることも明らかとなった。
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