研究概要 |
二重らせんから成るナノヘテロ構造を持つ多糖類ネットワークを持ち,水を多量に含みながら硬く弾性のある固体を形成する材料に注目し,その固体中でイオンや分子が水溶液中と同様に高速で拡散することを見出した. 多糖類として,アガロース,カラジーナンを主に用い,加熱して多量の水中に溶解し,冷却により固体化する前に,必要な電極(サイクリイクボルタモグラム,CVの場合には,作用極として透明電導性ガラス(ITO),対極Pt,参照極Ag-AgCl)を挿入し,室温まで冷却して固体化した.固体中の水中に共存させたFe(CN)_6^<3->は水溶液中と全く同様なCVを示した.多糖類2wt%の固体を用い,交流インピーダンス法により,等価回路から分子拡散係数Dapp,電極上における電荷移動抵抗Rct,電極上の電気二重層容量Cdlを算出した.Dappはアガロース,カラゲニン固体ともに水溶液中とほぼ同じ,Rctはアガロース固体中では大きかったが,カラゲニン中では水溶液中に近く,Cdlはどちらとも条件によっては水溶液中と同等となった.興味あることに,Dappは多糖類濃度を変化(2-4wt%)させてもあまり変わらず,また,Rctは多糖類濃度を大きくすると逆に減少し,カラゲニン固体中では水溶液中よりも小さくなった.このように,水を多量に含む多糖類固体中では分子が水溶液中と同じように高速拡散し,条件(多糖類の種類,濃度等)を設計すれば,水溶液と同様に色々な電気化学反応の媒体として使用できることを明らかにした. このほか,光化学反応も水溶液中と同様に起こることを明らかにした.また,イオン電導度も水溶液中とほぼ同じであることを明らかにした.
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