研究概要 |
高分子薄膜の構成単位となるL-システインのカルボキシル基が外側に突出したΔ-fac(S)-トリス(L-システィナト)錯体をロジウム(III)を中心金属に用いて合成した。ロジウム(III)錯体の合成原料としては無水塩化ロジウム(III)および無水L-システインを用い、80〜90℃の塩基性水溶液中、窒素雰囲気下で6〜7時間反応させた。さらにこの光学活性なロジウム錯体のチオラト硫黄原子をCo(III)に架橋させ、安定なΔΔ-Rh(III)-Co(III)-Rh(III)三核錯体を合成した。初めにこの三核錯体を用いて、錯体上のカルボキシル基がジアミンとペプチド結合を形成する条件を模索した。ペプチドの合成法としては、C末端活性化にN-ヒドロキシスクシンイミド(ONSu)を用い、カップリング試薬としてN,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いてDMFのような有機溶媒中でジアミンとの反応を行う方法と、DCCの代わりに水溶性カップリング試薬である1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)を用いて含水溶液中で反応させる方法を試みた。プチド架橋した生成物はカラムクロマトグラフィーにより分離し、架橋錯体の構造を^1Hおよび^<13>CNMRスペクトル等で明らかにした。その結果、水溶液中でN-ヒドロキシコハク酸イミドとEDCを用いた場合、常温でもジアミンが2つのペプチド結合を形成し2つのRh(III)末端を架橋している錯体が生成することが明らかになった。今後、他の溶媒についても検討する。さらに、Δ-fac(S)-トリス(L-システィナト)ロジウム(III)錯体だけを用いたペプチド架橋反応も試み、最終的な目的である金板上に錯体のチオラト黄原子を配向させることによる薄膜の合成を試みる。
|