水溶性ポリペプチドであるポリ[N^5-(2-ヒドロキシエチル)L-グルタミン](PHEG)は、水溶液中ではランダムコイル状態、アルコール系溶媒中ではα-ヘリックス構造をとることが知られている。本年度は、長鎖アルキル基であるドデシル基(C12)をA鎖、PHEGをB鎖とするABAトリブロック共重合体、C12-PHEG-C12を合成し、メタノール/水混合溶媒中でのC12-PHEG-C12希薄溶液の会合挙動を、円二色性(CD)と動的光散乱(DLS)測定を行い検討した。 C12-PHEG-C12は、前駆体であるC12-ポリ(γ-ベンジルL-グルタメート)-C12を2-アミノエタノールを用いて側鎖置換することにより得たが、反応時に主鎖ペプチド結合も切断してしまうため、ジブロック共重合体となってしまった分子を多く含むものであった。CD測定を行ったところ、純水中では10%以下のヘリックス含率であったが、メタノール含率の増加とともにヘリックス含率が増加した。DLS測定の結果、粒径分布は2つのピークを有し、メタノール含率が低い場合は小さな会合体と大きな会合体が共存するが、メタノール含率の増加とともに小さな会合体が観測されなくなり、大きな会合体のみとなった。このことは、PHEG鎖のヘリックス含率が増すにつれて、両端のC12鎖が同一の会合点に含まれるループ状の形態を取る割合が減少し、希薄溶液中においてもブリッジ状の形態が優勢となるために、ミクロゲル状の大きな会合体が形成されたためと理解することが出来る。 また、主鎖切断の起こらないような反応系を検討した。側鎖置換反応の際に、2-ヒドロキシピリジンを触媒として加えることで、主鎖の切断が起こる前に側鎖置換が完了し、分子量分布の狭いトリブロック共重合体が得られることがわかった。
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