研究課題
水溶性ポリペプチドであるポリ[N^5-(2-ヒドロキシエチル)L-グルタミン](PHEG)は、水溶液中ではランダムコイル状態、アルコール系溶媒中ではα-ヘリックス構造をとる。本年度は、PHEG鎖の両末端を疎水性のドデシル基で修飾したABAトリブロック型の共重合体、C12-PHEG-C12を用いて、エチレングリコール(EG)/水混合溶媒中での会合挙動と、そのゲル化挙動について検討した。この溶媒中では、C12は溶解性が悪いために会合体コアを形成する。高分子濃度が1wt%の希薄溶液の動的光散乱測定より、混合溶媒中のEG含率が50%以下の時には、C12-PHEG-C12は流体力学的半径が10nm以下の会合体を主に形成するのに対して、EG含率が60%以上になると100nm以上のサイズの会合体がほとんどとなることがわかった。これは、PHEGのヘリックス含率が増加するとともに、両端のC12基が同じ会合ドメインに含まれるようなループ型のコンホメーションをとれなくなり、PHEG鎖が異なる会合ドメインを架橋するようなブリッジ型のコンホメーションを優先的にとる結果、多数の会合ドメインを含むミクロゲル状の会合体が形成されたためであると考えられる。さらに、高分子濃度が10%以上の溶液の粘度変化をチューブ反転法により観測したところ、EG含率の増加とともに、同じ高分子濃度でもより粘稠な溶液が得られた。これらの溶液では希薄溶液の場合と同様、C12会合ドメインがPHEG鎖で架橋され、その結果物理ゲルが形成されているが、EG含率の増加に伴うヘリックス含率の増加により、ブリッジ型コンホメーションの割合が増加しゲル化が起こりやすくなったと考えられる。また、一旦高いEG含率で架橋構造を形成させると、そこに水を加えてPHEGのヘリックス含率を低下させても、架橋構造自体にはあまり影響を及ぼさないことが示唆された。
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