制御ラジカル重合の手法を利用した成長ラジカルの鎖長や共重合系の成長末端の研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15550107
• 研究機関: 奈良教育大学
• 研究代表者: 梶原 篤 奈良教育大学, 教育学部, 助教授 (50224415)
• キーワード: ラジカル重合 / 電子スピン共鳴 / 成長ラジカル / 原子移動ラジカル重合 / ATRP / 制御ラジカル重合 / 前末端基効果

研究概要

近年、制御ラジカル重合法の発展により、末端の炭素-ハロゲン結合を切断して任意の鎖長のモデルラジカルを発生させることが可能となってきたため、スペクトルの鎖長依存性を調べることができるようになってきた。本研究では、主としてメタクリル酸エステル類の成長ラジカルの鎖長依存性とESRスペクトルとの関係を明らかにすることを目指している。
1)成長ラジカルの鎖長や分岐構造を調べる研究
MMAをはじめ、種々のメタクリル酸エステルのいろいろな鎖長をもつポリマーをATRP法で合成し、それらをラジカル前駆体として成長ラジカルのモデルラジカルを発生させ、鎖長とESRスペクトルとの関係を明らかにした。この成果はMacromolecules誌に発表したほか、アメリカ化学会の講演をまとめた本の一章としても発表した。メタクリル酸エステル類の成長ラジカルのESRスペクトルは顕著な温度依存性を示すことも知られており、種々の温度で測定したスペクトルを分子運動を考慮したシミュレーションプログラムで解析し、成長末端の回転運動の活性化エネルギーや頻度因子なども求めた。これらの成果は国内の高分子学会で発表したほか、論文を投稿準備中である。
アクリル酸エステルについては2量体、3量体などオリゴマーを合成し、ラジカルの連鎖移動に基づくmid-chain radicalの生成について検討し、結果として出来るポリマーの分岐構造とmid-chain radicalの生成との関連について調べている。一部の成果は前述のアメリカ化学会の本に発表した。
2)ラジカル共重合系の成長ラジカルについて調べる研究
ATRP法を応用して、種々のアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルを組み合わせた2量体モデルラジカル前駆体を合成し、そこから発生させたラジカルをESRで観測することにより、共重合系における前末端基効果を直接観測した。成果はMacromolecules誌に発表した。

研究成果

• [文献書誌] 梶原 篤: "制御ラジカル重合の手法を基にしたメタクリル酸エステル類やアクリル酸エステル類の成長ラジカルの鎖長や末端構造の電子スピン共鳴分光法による解析"高分子論文集. 61・4(印刷中). (2004)
• [文献書誌] Atsushi Kajiwara, Ajaya Kumar Nanda, Krzysztof Matyjaszewski: "Electron Spin Resonance Study of Monomeric, Dimeric, and Polymeric Acrylate Radicals Prepared Using the Atom Transfer Radical Polymerization Technique"Macromolecules. 37. 1378-1385 (2004)
• [文献書誌] Shinji Nomura, Takahito Ito, Atsushi Kajiwara, et al.: "Polymerization by Insertion of Molecular Oxygen into Crystals of 7,7,8,8-Tetrakis(ethoxycarbonyl)quinodimethane"Angew.Chem.Int.Ed.. 42. 5468-5472 (2003)
• [文献書誌] Bernhard Knuehl, Atsushi Kajiwara, Krzysztof Matyjaszewski et al.: "Characterization of Cu(II) Bipyridine Complexes in Halogen Atom Transfer Reactions by Electron Spin Resonance"Macromolecules. 36. 8291-8296 (2003)
• [文献書誌] Sabine Beuermann, Michael Buback, Atsushi Kajiwara, et al.: "Critically Evaluated Rate Coefficients for Free Radical Polymerization, 4. Propagation Rate Coefficients for Methacrylates with Cyclic Ester Groups"Macromol.Chem.Phys.. 204. 1338-1350 (2003)
• [文献書誌] Atsushi Kajiwara, Kumiyo Maeda, Noritaka Kubo, Mikiharu Kamachi: "Origin of 16-Line Spectra Observed in ESR Study of Radical Polymerization of tert-Butyl Methacrylate : Clear Evidence for ESR Detection of Polymeric Propagating Radicals"Macromolecules. 36. 526-528 (2003)
• [文献書誌] Atsushi Kajiwara, Mikiharu Kamachi (分担執筆): "Electron Spin Resonance Study of Conventional Radical Polymerization of tert-Butyl (Meth)acrylates Using Radical Precursors Prepared by Atom Transfer Radical Polymerization"American Chemical Society. 86-100 (2003)