研究概要 |
近年、制御ラジカル重合法の発展により、末端の炭素-ハロゲン結合を切断して任意の鎖長のモデルラジカルを発生させることが可能となってきたため、スペクトルの鎖長依存性を調べることができるようになってきた。本研究では、主としてアクリル酸エステル類やメタクリル酸エステル類の成長ラジカルの鎖長依存性とESRスペクトルとの関係を明らかにすることを目指している。 1)成長ラジカルの鎖長や分岐構造を調べる研究 MMAのオリゴマーをATRP法で合成し、2量体、3量体、4量体、5量体を単離、精製した。それぞれから発生させたラジカルをESRで観測することにより、成長ラジカルモデルとしての構造の明確なラジカルのコンホメーションや末端の回転の活性化エネルギーなどについて検討した。 アクリル酸エステルについては2量体、3量体などオリゴマーを合成、単離し、ラジカルの連鎖移動に基づくmid-chain radicalの生成について検討し、結果として出来るポリマーの分岐構造とmid-chain radicalの生成との関連について調べた。2量体では水素移動は起らず、3量体から起り始めることを明確にした。連鎖移動反応が分子内の1,5水素移動反応であることも明らかとなった。 2)ラジカル共重合系の成長ラジカルについて調べる研究 ATRP法を応用して、種々のアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルを組み合わせた2量体モデルラジカル前駆体を合成し、そこから発生させたラジカルをESRで観測することにより、共重合系における前末端基効果を直接観測した。成果はMacromolecules誌に発表した。また、RAFT重合系に生じる安定中間体ラジカルをESRで観測し、重水素化モノマーを用いた研究などで何が起こっているのかについて、検討した。成果は高分子学会などで発表した。
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