環状イミドモノマーであるN-置換マレイミド(RMI)およびN-置換イタコンイミド(RII)の不斉アニオン重合をキラルリガンド/有機金属錯体を開始剤に用いて行い、その不斉重合性と旋光性を明らかにし、またそれらのポリマーの光学分割能を明らかにした。RMIの精密不斉ラジカル重合を行い、リビングラジカル重合性、立体特異性ラジカル重合性を明らかにした。以下にその概要を示す。 1.RMIの不斉ラジカル重合及び原子移動ラジカル重合(ATRP):N-1-フェニルエチルマレイミド、N-1-ナフチルマレイミド、N-フェニルマレイミドのATRPを行なった。キラルなリガンドを用いると光学活性マレイミドポリマーが得られた。またリビング重合性は認められなかった。キラルコバルト錯体を用いると旋光度の比較的高いN-1-ナフチルマレイミドポリマーを得ることができた。 2.キラルRMIの不斉重合と得られたポリマーの光学分割能:N-置換体にアミノ酸誘導体(L-アラニン、L-ロイシン、L-バリン、(R)-または(S)-フェニルアラニン、(R)-または(S)-フェニルグリシン)を有するRMIを合成し、その不斉アニオン重合をキラルリガンド/有機金属を用いて行い、旋光度の非常に高いポリマーを得ることに成功した。円偏光二色性(CD)やNMRスペクトルから、主鎖に不斉が誘起されたことを示した。またこれらのポリマーを用いてHPLC用ラセミ体の光学分割用のキラル固定相(物理吸着型又はコート型)を調整し、一部のポリマーについては、非常に高い光学分割能を有していることを明らかにした。 3.化学結合型キラル固定相の開発:不斉アニオン重合で得られたキラルRMIポリマーを用いてシリカゲルに化学結合した化学結合型HPLC用キラル固定相を開発した。このポリマーを用いたキラル固定相では、全ての溶離液を使用することができる。既に一部の医薬品中間体の完全分割に成功した。 4.新規RMIの合成と不斉重合:N-置換基にアザクラウンエーテル類やアセチレン誘導体を有するRMIを新規に合成し、その不斉重合を行った。得られたポリマーの旋光性や構造について検討している。 5.新規RIIの合成と不斉重合:N-置換基にアミノ酸誘導体を有する新規キラルRIIを合成し、その不斉重合と得られたポリマーの不斉認識能について調査している。
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