本申請研究では胆汁酸を有効にトラップする機能を有する水溶性ポリマーの分子設計指針を確立することを目的とした。この目的のために、臨界ミセル濃度以下の希薄な状態での胆汁酸とポリマーの相互作用を調べることが可能な蛍光法の利用を試みた。まず、ナフチル基で修飾したコレステロールを含むメタクリルアミド型のモノマーを合成した。次に、このモノマーとスルホネートイオンを側鎖結合したモノマーをランダム共重合することで、ナフチル基でラベルしたコレステリル基を疎水基として含む両親媒性高分子電解質を合成した。 光散乱や粘度測定からポリマー中のコレステリル基の会合によりフラワーミセルを形成していることを確かめた。胆汁酸をフラワーミセルの水溶液中に添加すると、フラワーミセルが崩壊することが光散乱の測定結果からわかった。これは、フラワーミセルの疎水性コアと胆汁酸の相互作用のために、フラワーミセルのコアが解離するためだと考えられる。つまり、胆汁酸はフラワーミセルの疎水性コアにトラップることが示唆された。またコレステリル基にラベルしたナフタレンの蛍光情報からも、胆汁酸の添加により、ナフタレンのまわりの微環境の極性や運動性が変化することが蛍光プローブ法と蛍光偏光解消法により確認された。さらに、臨界ミセル濃度よりも低い濃度の胆汁酸を添加した場合でも、フラワーミセルと胆汁酸との相互作用があることが蛍光法から確認された。臨界ミセル濃度以下の胆汁酸を効果的にトラップすることが可能なコレステリル基を側鎖結合した両親媒性高分子電解質は、腸からの胆汁酸の再吸収を抑制可能だと期待される。
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