研究概要 |
環の反転を伴わない剛直な構造を持つキラルカリックスアレーンは種々の官能基の導入が容易で高い不斉認識能を示す.本研究では,新しい機能発現の場として,ドナー-アクセプター相互作用を利用し,キラルカテナンの構築を目指した.分子模型の考察からキラルカッリクスアレーンにビピリジニウム環を導入し,カテナンとする部分にクラウンエーテルを挿入した構造を設計した.空孔の深さを調整するため,メチレン鎖長が2〜5の分子の合成を検討した.カリックスアレーンにアルキル鎖を付けた後,ビピリジニウム塩と変換し,最後に34-クラウン-10の存在下,ジブロモパラキシレンで閉環することで目的のカテナンを収率38-80%という非常に高い収率で得ることができた.これは剛直な構造を有するキラルカリックス[4]アレーンは反応部位が近傍に存在することから,カテナンのような超分子合成に適していることを示している.前駆体の光学分割にも成功し,光学活性体構築への方法論が確立できた.カテナンの動的挙動をVT NMRで調べた.低温では炭素鎖が奇数の場合,主にカリックスアレーン側のピリジニウム環が変化する傾向が見られた。一方、炭素鎖が偶数の時はビピリジニウム環だけではなく、カリックスアレーン部位にも変化が見られた.このように架橋鎖長の若干の違いがカテナン部位だけではなく,カリックスアレーン部位を含めた分子全体の挙動にも影響を与えることが分かった.一方,ロータキサン構造とするためカルボニルやピリジン環を有するポリエーテル鎖を合成し,カリックスアレーンに導入する反応を検討した.通常のクラウンエーテル合成に比べ収率が低く条件の再検討が必要であることがわかった.
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