研究概要 |
本研究では分子間力などの弱い結合力を用いて複合分子システムを三次元的に集積させて、興味深い磁性を示す超分子構造の開発、ならびにその複合材料への応用を目指した。ホスト-ゲスト化学を用いて強磁性的/反強磁性的相互作用をスイッチしたり、光や圧力という外的刺激により磁化を発生あるいは消滅させるといったような、動的に磁性を制御することを、複合材料のもう一つの鍵となる性能と位置づけた。また、「単分子磁石」の合成開発を行った。 1.キラルな空間群をもつ弱強磁性体[Fe(pm)_2Cl_2](pmはピリミジン)の磁気構造を偏極中性子線回折などから明らかにした。新規な磁気光学素子に展開できる可能性がある。 2.[M(pm)(N_3)_2](M=Mn,Fe,Co,Ni)は、紫外光照射により誘起磁化を生じるものを見いだした。[M(pm){N(CN)_2}_2]はナノサイズ空間を持ち、ゲスト分子の貫入により磁気相転移温度などが変化した。この物質は構造が柔らかく、0.4GPa程度の圧力によって自発磁化の有無をスイッチできた。 3.クラウンエーテル状の側鎖をもつニッケル錯体では、Baイオンの有無によって磁気的相互作用を強磁性/反強磁性的にスイッチすることができた。 4.クラウンスピンラベル試薬を合成開発した。反磁性イオンを包接させると磁性に変化が見られた。 5.気体吸蔵性能を目指したハニカム格子状多孔質錯体[Cu(4APM)(OCH_3)(NO_3)]を合成した。 6.ラジカルが直接遷移金属イオンへ配位した、有機無機複合磁性材料[Ni(41mNNH)_2(NO_3)_2]の高スピン状態を明らかにした。 7.ランタノイドと3d金属イオンを含む多核錯体から単分子由来のヒステリシスを示すナノサイズ磁石[DyCuDy]および[Ln_4Cu](Ln=Tb,Dy)を開発した。
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