研究課題/領域番号 |
15550116
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小村 照寿 金沢大学, 工学部, 教授 (00019746)
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研究分担者 |
山口 孝浩 金沢大学, 工学部, 講師 (90272947)
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キーワード | アジン系色素 / 蛍光 / 酸化還元特性 / プロトネーション / 化学修飾電極 / インピーダンス応答 / 電荷輸送 / 拡散係数 |
研究概要 |
酸化還元活性で且つ蛍光性をもつ2つのアジン系色素、フェノサフラニンとチオニンを陽イオン交換性ポリマーで電極上に固定して機能性電極薄膜を作製し、その酸化還元挙動を調べた。厚さ100nmの膜は、20mV/sよりも遅い電位走査速度では、可逆的な表面反応型ボルタモグラムを示すが、厚さ1μmの膜は、拡散支配型電荷輸送に特徴的な挙動を示した。化学修飾電極の半波電位は、溶液pHが1と6の間では-65mV/pHの割合でpHに依存するので、色素のレドックス反応は2電子、2プロトン過程とみなされる。可視吸収と蛍光放射スペクトルのpH変化によれば、色素酸化体D^+は2つのアミノ基で次のようなにプロトン付加を起こす。 D^++H^+→DH^<2+> _PK_<a2>=5.9。 DH^<2+>+H^+→DH_2^<3+> _PK_<a1>=0.8。 一方、色素酸化体が5-ヒドロ型に還元されると、アミノ置換基の塩基性が増加するために、6以下のpHでプロトン付加されてDH_3^<2+>を生成する。こうして、弱酸性溶液では酸化還元によって色素のイオン価が変化しないので、静電引力によりアニオン性ポリマーに保持される。DH^<2+>+2H^++2e→DH_3^<2+> 色素の種々の還元レベルで電極の交流インピーダンス応答を測定して、界面電子移動過程と膜中電荷輸送過程の速度を調べた。電荷キャリアが有限の厚さの層を通って障壁界面まで拡散するというモデルを使って、インピーダンス応答を解析し、電荷輸送の見かけの拡散係数を求めた。この拡散係数は0.4M HCl溶夜中では1.1x10^<-11>cm^2/sであるが、pHが3へ増加すると1x10^<-12>cm^2/sまで減少した。薄膜中の電荷輸送は、色素分子間の電子のホッピングを経て起こると推測される。複素環の-NH-から-N=へ電子がホップする時、逆方向へのプロトン移動が伴うために、色素の脱プロトン化は電子移動速度定数の減少を招くものと考えられる。
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