研究概要 |
アルキル尿素(H_2NCONHC_nH_<2n+1>)、アルキルチオ尿素(H_2NCSNHC_nH_<2n+1>)、メチルアルキル尿素((CH_3)HNCONH(C_nH_<2n+1>))、メチルアルキルチオ尿素((CH_3)HNSONH(C_nH_<2n+1>)、ウレイド(H_2NCONH(C_nH_<2n>)NHCONH_2)、ジブチル尿素((C_4H_9)HNCONH(C_4H_9))、(各物質系でn=2-16)、三置換尿素誘導体(R_1R_2NCONHR_3)などについて、熱分析、X線結晶構造解析、固体NMR測定などの実験を行った。 ブチル尿素、オクチル尿素、ジブチル尿素、ドデシルチオ尿素には「準プラスティック相」が発見された。結晶構造はこれらの結晶相の特徴がアルキル基の動的ディスオーダーであることを示している。ブチル尿素、ジブチル尿素結晶中のアルキル基の動的挙動特性をNMR法により解析した。 アルキル尿素にはしばしば相転移が観測されが、その機構は水素結合で構成される超分子のラメラ面の相対的ずれであることが明らかなった。 メチルアルキルチオ尿素は予想に反して相転移示さない。こ現象には、trans-cis型分子が形成する二次元超分子のパッキングから生じるアルキル基の「相互かみ合わせ」構造が寄与している。 ウレイド(n=4,5)結晶はカテナン型インターロッキングを持った特異な水素結合性二重超分子を構成単位とすることが分かった。これは結晶設計予測と一致する。 ブチル尿素、ドデシルチオ尿素結晶は半導体領域の伝導性を示す。この機構はプロトンジャンプと推察される。 アルキル尿素、トリプチセンキノンなどの有機結晶混晶の物性と局部的分子間相互作用の関係、三置換尿素誘導体の異常高融点とCH…O型の水素結合の関係などを明らかにした。 本研究は、有機分子水素結合系と長鎖アルキルの組み合わせに基づく,新たなメソフェーズの結晶設計および物性研究に寄与すると思われる。
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