研究概要 |
岩塩型リチウムイオン伝導体開発の方針を決定する予備的な実験として、合成が容易なNaClやNaBrを取り上げ、InX_3(X=Cl, Br)との化合物や固溶体形成の可能性とイオン伝導性について検討した。得られた試料に対して、複素インピーダンス法による導電率測定、熱測定、X線を用いた構造解析やNMR測定を行った。Na_3InCl_6は調和融点をもたないがブリッジマン法で単結晶が得られ、X線構造解析と^<23>Na、^<115>In NMRを測定することができた。Na_3InCl_6は空間群P-31cの三方晶系であり、孤立しC_<3v>の対称性をもったInCl_6^<3->と結晶学的に異なった2つのNa1とNa2の存在が明らかとなった。さらに400K付近でこの2つのNaに帰属される^<23>Na NMR信号が融合し、これらの異なったサイト間をNaがジャンプしながら拡散していることが示唆された。さらに450Kでの粉末X繰回折データのリードベルド解析はNaが新たなサイトもわずかながら占有し、イオン伝導するモデルを示唆した。このようにNMRやX繰回折データはNa^+の拡散とその伝導パスを示唆するものの、一定組成のNa_3InCl_6では急激な伝導度の上昇や相転移もなく、またその伝導度は500Kで10^<-5>Scm^<-1>にとどまっている。一方、Na^+のサイトの一部In^<3+>で置換する目的で合成したNa_<3-3x>In_xInCl_6は400K付近で相転移を示し、400Kで10^<-4>Scm^<-1>以上の比較的高い導電率を示した。今後、これらの両者の関係についてさらに詳細に検討することで、イオン伝導体構築の基本方針を確立し、これに基づきリチウムイオン伝導体を探索する。
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