末端にシンナミルアルコール部位を有する二級アンモニウム塩を調製し、24員環クラウンエーテルと擬ロタキサンを形成させた。これをトリブチルホスフィンを触媒としてアシル化することによりエンドキャップし、末端に嵩高いシンナミルエステル構造を有するロタキサンを合成した。このロタキサンと嵩高いアリルマロン酸エステルとの反応を検討したところ、嵩高いdpppを配位子とするパラジウム錯体を触媒として用いることで、末端官能基変換を行なうことができた。触媒量が低下するにしたがって収率は向上し、触媒量を5%とすることで、収率95%で末端官能基変換を達成した。ロタキサンのアンモニウム塩部位は反応を阻害しなかったが、クラウンエーテルの立体障害によって反応は強く阻害された。末端官能基変換が高収率で進行したのは、シンナミルエステル部位をパラジウム触媒が活性化している際に、パラジウム上の嵩高い配位子のため、軸からの輪の脱離が起こらないためであると考えられる。前年度にDiels-Alder反応で生成するシクロヘキサジエンの二重開裂が進行しなかったので、二重結合の一方を窒素-窒素結合に置き換えることを検討した。アセチレンの代わりにアゾジカルボニル化合物を用いてもDiels-Alder反応は効率的に進行し、生成するジアザシクロヘキセンの窒素-窒素単結合はヨウ化サマリウム(II)で、二重結合はオゾンでそれぞれ順に定量的に開裂させることができた。この手法を用いれば、スルホレン部位を持つロタキサンの末端官能基変換、[2]ロタキサンの[3]ロタキサンへの変換、いずれの反応も可能になると期待できる。
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