本研究では、研究視点を「生体酵素ニトロゲナーゼの活性中心の固体表面上への展開」に基軸をおいて、生体酵素の活性中心の機能原理の解明とその機構に基づく新しい人工触媒単位の提案を行なうことを目的としている。本年度は、気相反応場を通じて予め生成させた複合ナノクラスターを機能単位と位置付け、気相レーザー蒸発法で生成する有機金属クラスターの生成手法の確立と、これらを生体模倣機能触媒への展開をはかる要素技術として、これまでに確立したソフトランディング法の改良をおこなった。レーザー蒸発法の確立として、有機金属クラスターの生成法での知見をもとに、鉄-硫黄粉末から成型させたターゲット試料として、棒状よりも円盤状の形が、生成効率、長時間の安定性ともに優れていることを見出した。円盤状ターゲット試料のレーザー蒸発源の開発には、現有していた分子線源に、新たな真空部品を付加することにより対応した。また、モリブデンなどのもう一成分の原子付加は、ターゲットに当該の粉末試料を混ぜて成型するよりも、もう一台のレーザー蒸発によって金属試料を気相混合する方が有効であることを明らかにした。ソフトランディングさせる固体基板として、金基板上の自己組織化膜を利用するため、稠密かつ清浄な基板作成に取り組み、金基板を自己組織化膜形成の直前に強酸で清浄化すると、自己組織化膜の規則性が格段に向上することを、反射型赤外吸収スペクトルを測定することにより明らかにした。この基板上でのソフトランディングされたクラスター種の配向特性を、バナジウム-ベンゼンの一次元錯体の振動モード依存性によって評価したところ、自己組織化膜の炭化水素鎖との相互作用によって、異方性を有するクラスター種の配向が制御できることがわかった。
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