研究課題
本研究では、研究視点を「生体酵素ニトロゲナーゼの活性中心の固体表面上への展開」に軸をおいて、生体酵素の活性中心の機能の解明とその機構に基づく新しい人工触媒単位の提案を行なうことを目的としている。本年度は、昨年度に引き続き複合ナノクラスターの機能評価と探索を行ない、レーザー蒸発分子ビーム法で生成する希土類有機金属クラスターについて、電子物性評価と生成機構の解明を行なった。また、有機金属クラスターを題材として、ソフトランディング法に用いる基板に、金基板上の自己組織化単分子膜(SAM)とともにシリコン基板の自己組織化膜を利用する手法の確立を進め、生体模倣機能触媒への展開をはかる要素技術を拡充させた。金属と有機配位子が交互に配列した多層サンドイッチ構造をもつ希土類有機金属化合物であるユウロピウムとシクロオクタテトラエンを組み合わせたサンドイッチ錯体では、多層化が約20層にまで及ぶナノワイヤー化が起こることを明らかにするとともに、その生成機構を考察した。すなわち、各サイズごとのイオン化エネルギー(IE)および電子親和力(EA)を決定することで、電荷移動によってナノワイヤーが効率的に生成していることを解明した。一方、この錯体負イオンの光電子スペクトルについて、その遷移エネルギーに関して精密な理論解析を量子化学計算を用いて行ない、それぞれのスペクトルの振る舞いを説明する理論モデルを構築することに成功した。また、気相合成した1:2組成のバナジウム-ベンゼンサンドイッチクラスター正イオンを、アルカンチオールのSAMで修飾された基板へソフトランディングさせた。SAMの鎖長変化に伴う担持クラスターの熱的安定性の変化を昇温脱離法と反射吸収型赤外分光法により観測した。SAMの鎖長が長くなるにつれて、基板からのクラスターの脱離温度は高温側へとシフトし、熱的安定性が向上するとともに、クラスターの配向が変化することを見出した。
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