研究概要 |
1.スタッキング相互作用が強く働く化合物として、アセナフトピロールを合成し、これを前駆体としてポルフィリン、ピロメテン色素をはじめとする、様々な共役拡張分子の合成を達成した。得られたポルフィリンはSoret bandが556nmまでレッドシフトし、さらに非対称形とすることで本来禁制遷移であるQ bandの吸光係数がSoret bandの8割程度まで上昇することが明らかとなった。さらに、末端に電荷を持ったポルフィリンの合成について検討した。逆Diels-Alder反応を用いるベンゾポルフィリン合成を応用して、pHによりスタッキング能が制御できる、8つのカルボキシル基を持つオクタアルコキシベンゾポルフィリンの合成を達成した。 2.水素結合による構造制御に関しては、主鎖にピリジンを導入した非天然オリゴペプチドを用いてその効果を検討した。α炭素に2つのピリジン環が2位で結合したアミノ酸(2Dpy)を含むトリペプチドを合成し、その構造をNMRにより決定した。2Dpyの前後のアミノ酸が共にジメチルグリシン(Aib)の場合にはβターン構造を取るのに対して、2Dpyの前後のアミノ酸の一方もしくは両方がグリシンの場合には、天然形ペプチドには見られない伸びた形の特徴的なコンホメーションを取ることがわかった。 3.配位結合を利用した動的機能性を持つレセプターを構築することを目的としてリガンドの設計・合成を行った。フェロセンの1,1'-位に、末端にビピリジンを持つエーテル鎖を二本結合した化合物は、錯体を形成した状態ではオニウム塩を1:1のモル比で取り込むことがESI-MSおよびUVスペクトルにより確認された。また、NMRとESRより、オニウム塩の捕捉によって、銅が一価から常磁性の二価へと酸化されることを明らかにした。
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