研究概要 |
天然の牛脳由来のN-acylsphingomyelinと半合成のN-palmitoylsphingomyelinの2種のスフィンゴミエリを研究対象物質として選び,それぞれのスフィンゴミエリン2分子膜系の水和特性を示差走査熱量測定とX線回折の技法を用いて検討した。牛脳由来のスフィンゴミエリンの脂肪酸鎖長の組成は正電荷イオン化物質量分析から決定し,この組成比から,牛脳スフィンゴミエリンの分子量を決定した。それぞれのスフィンゴミエリン-水系の試料を水分量を逐次増加させることで調整し,水分率の異なる約30種試料のDSC測定を低温領域から行い,得られた氷融解DSC曲線をコンピュータプログラムに従って成分分割し,氷融解エンタルピーを見積ることで,不凍結層間水,凍結層間水およびバルク水として存在する各々水分子の数を見積った。その結果,特に注目すべきことは,2分子膜層間に取り込まれる凍結層間水であり,これの水分子数は半合成スフィンゴミエリンは通常の水和量を示すのに対して、天然のスフィンゴミエリンは2倍量以上の水和量を示すことを明らかにした。X線回折法を用いて同様の水分率の異なる天然スフィンゴミエリン-水系試料の層間水相の厚さを電子密度プロファイル解析から検討したが,DSC測定の結果と同様にこの水相の厚さが長いことをすなわち層間水量が大きいことを明らかにした。
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