廃プラスチックの1/2以上を占めるポリオレフィンを化学原料として有用な低級オレフィンへ選択的に分解するケミカルリサイクルプロセスを確立するための触媒の開発について検討し、以下のことを明らかにした。 結晶性アルミノシリケートで細孔径が0.55nmのホウ素シリケートは、ポリプロピレンの低級オレフィン(C2-C5)への分解に活性な触媒であった。一方、平均細孔径が3.8nmの均一なメソポアを有するMCM-41を触媒としたときの低級オレフィン収率は低い値であった。しかし、両触媒を物理的に混合すると、それぞれ単独で用いるよりも優れた触媒特性が得られることがわかった。ホウ素シリケート/MCM-41複合触媒の低級オレフィン収率は高く、とくに1:1混合触媒で高い値が得られた。触媒の固体酸性を昇温脱離法(NH3-TPD)で検討したところ、MCM-41とホウ素シリケートはともに弱酸性であり、複合による酸性質の変化は見られなかった。したがって、ホウ素シリケートへのMCM-41の添加による分解促進作用は、MCM-41の大きな細孔によって分子径の大きな分解フラグメントの拡散が容易になることに起因すると考えられる。MCM-41上で低分子化されたフラグメントはホウ素シリケートの細孔内へ拡散しさらに低分子化されるものと推測される。複合触媒では、低級オレフィンの収率は向上するが、低級パラフィンの生成はほとんど変化しないため、結果的にオレフィン/パラフィン比も大きくなり選択的な分解が可能になった。
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