本研究では、より均一な活性サイトの構築を目的として、自己集合性を持つピラー錯体を分子設計して粘土鉱物層間に導入することにより、著しく結晶性の高い金属錯体-粘土鉱物ナノ複合体を得た。結晶中のピラー錯体は、溶液中と著しく異なる特徴的な立体構造を保持し、高活性で高安定性のナノ複合体触媒を得た。さらに、ポルフィリン環組込ピラー錯体を粘土鉱物へ導入し、ポルフィリン錯体-粘土鉱物ナノ複合体を合成し、錯体の配向性制御に成功した。 1.ピラー錯体合成と分子集合性:合成したピラー錯体は、主にアルキル鎖間の疎水相互作用およびpyridine環のπ-πスタッキングにより、高い分子集合性を示した。これらXRD結果は、固体NMR測定結果と良く一致した。また、ポルフィリン骨格を組込んだピラー錯体の合成も成功した。 2.ナノ複合体:合成粘土鉱物にピラー錯体をインターカレートして、高結晶性のナノ複合体を合成した。アルキル基の炭素数に比例して層間隔が拡大した。固体NMR測定により、アルキル鎖はall-transと部分的なgauche配座を取り、効率の良いパッキングをしていた。結晶性の向上には、ピラー錯体-粘土層間の静電引力およびアルキル鎖間の疎水相互作用が寄与していると結論した。ポルフィリン型ピラー錯体では、clearance space(C.S.)が0.43〜1.68nmのナノ構造を持つ複合体を合成した。 3.触媒活性:Rh錯体においては、オレフィン水素化反応、ポルフィリン錯体では、酸素を酸化剤とするスチレンの酸化反応(Isobutyraldehyde共存下)で活性が見られた。以上の結果より、錯体-粘土鉱物ナノ複合体触媒を合成し、層間隔を制御することで活性を向上させることに成功した。さらには、均一系触媒より安定で、リサイクル可能でグリーンプロセスに適用可能な新規な固定化触媒の合成に成功した。
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