研究概要 |
通常の河川水,水道水中のホウ素濃度は,およそ10ppb(10^<-8>g/g)程度であり,以前開発したクロモトロープ酸を反応試薬とする蛍光検出/フローインジェクション法(FIA)でも定量可能であるが,半導体製造分野では10ppt(10^<-12>g/g)レベルの高感度定量が要求されている。水溶液中ではホウ素は反応性に乏しいため,反応試薬を大過剰に添加する必要がある。クロモトロープ酸は自身も蛍光を発するため,未反応のクロモトロープ酸の蛍光が感度向上を妨害する。そこでホウ素錯体生成後,アルカリを加えてバックグラウンドの蛍光強度を低下させることにし,アルカリとして水酸化ナトリウムに替えてアンモニアを用いたところ,非常に安定なベースラインを得ることができた。さらにEDTAを添加して,共存する金属イオンの妨害を除くことができ,前処理なしでホウ素10^<-9>Mの定量が可能となった.検出限界は5x10^<-10>M(5ppt)で,現在簡便で最も高感度な定量法となった。FIAを用いることにより1時間に40試料の分析が可能であった。本法により,イオン交換水,蒸留水中に存在するホウ素は直接定量できた。超純水中に存在する微量のホウ素(10^<-10>Mレベル)は,加熱濃縮操作法を併用することにより,定量可能となった。また,クロモトロープ酸は非常に有用な反応試薬であるが,自然光で分解される。この欠点を克服する新規試薬として,2,7-naphthalenedisulfonic acidの1,8-位にdiamino基,そのトシル誘導体2種,hydroxyl基とtrifluorosulfoamino基を導入した水溶性蛍光反応試薬4種の合成を行い,新規試薬の基本定数を決定した。Trifluorosulfoaminoと-OHをもつ試薬はホウ素と反応性を示し,新規蛍光反応試薬を合成することができた。今後定量法を確立する。
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