フォトクロミック分子であるジアリールエテンはその着色状態が安定であり、自然退色しないので線量計測に用いることができる。微量放射線が検出できる高感度放射線カラー線量計をめざし、溶液系、アモルファス系、高分子分散系の放射線照射による感受性を検討した。この際、放射線照射は本研究所の照射施設を用いて行った。 1.種々のアモルファスジアリールエテンを用いて薄膜を作製し、その放射線感受性を比較した。ジフェニルフェニル基をもつジアリールエテンが感受性が高く、照射線量100Gyで着色が認められた。光照射について同様に感受性を測定し、放射線照射との比較検討を行った。 2.原子番号の大きい金属を含む金属錯体、有機蛍光体、無機蛍光体などを添加して放射線感受性を検討した。CaWO_4、CeMgAl_<11>O_<19>、BaFCl:Euなどの無機蛍光体を用いた際感度が向上した。特にBaFCl:Euを用いた際、10Gyの放射線照射で感度良く着色した。 3.科研費の備品費で購入した遊星型微粒粉砕機を用いて無機蛍光体の微粒子化を行った。微粒子化することにより蛍光強度が低下し、放射線感受性の著しい向上は認められなかった。今後微粒子化により、蛍光強度が低下しない方法が必要である。 4.逆反応の起こりにくいメトキシ基を含むジアリールエテンについて検討した。ビス(2-メチル、5-フェニル-3-チエニルペルフルオロシクロペンテン)、チアゾール基を含むジアリールペルフルオロシクロペンテンを用いた際と同様の放射線感受性を示し、この系は1度使用の線量計測用に用いることができることが明らかとなった。 5.再使用の可能性を探るため、繰り返し耐久性を測定した。放射線着色、消色を繰り返し、10回程度の使用では感度の低下は認められなかった。
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