1、分子全体が両親媒性を取る、「ポリペプチド片面修飾ポルフィリン」の合成 両親媒性βシート構造をとりうる5残基のポリペプチドとして、AcCysLysValLysValNH2およびAcCysGluValLysValNH2を合成した。トランス位にブロモアセタミド基を有するポルフィリンを、ジピロメタン法により合成した。これらをDMF中で反応させ、HPLCで精製し、ポリペプチドを2本結合したポルフィリンを得た。 2、「ポリペプチド片面修飾ポルフィリン」の水溶液中での自己組織化 このポリペプチド片面修飾ポルフィリンでは、2本のポリペプチド鎖はポルフィリン環の片面をおおうように、逆平行βシート構造を形成すると考えられる。その結果イオン性アミノ酸残基(LysとGlu)を外側に、親水性アミノ酸残基(Val)をポルフィリン側に向けた構造となり、分子全体が両親媒性構造をとる。実際、この分子はCDスペクトルにおいてβシート構造に特徴的なコットン効果を示した。通常βシート構造はポリペプチド鎖2本では不安定であることから、この分子がいくつも集合していることが考えられた。緩衝液中での吸収スペクトルやHPLC分析において顕著な濃度依存性を示すことからも、この分子の自己集合性が示唆された。現在NMR測定により詳細な構造を検討中である。 3、自己組織化「ポリペプチド片面修飾ポルフィリン」による、生体類似多電子移動反応 この「ポリペプチド片面修飾ポルフィリン」の鉄錯体、コバルト錯体を合成し、過酸化水素水を酸化剤として、ヘム酵素の一つであるペルオキシダーゼ類似の触媒反応を試みている。基質として、ペルオキシダーゼ活性の指示薬(メチレンブルー誘導体)、フェノール誘導体を用い、触媒の自己集合構造と酸化反応活性の関係について検討している。
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