研究課題/領域番号 |
15550153
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
矢島 博文 東京理科大学, 理学部, 教授 (10147506)
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研究分担者 |
深井 文雄 東京理科大学, 薬学部, 教授 (90124487)
河合 武司 東京理科大学, 工学部, 教授 (10224718)
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キーワード | キトサン / ナノ粒子 / ヨウ素 / 超分子錯体 / 自己集合 / 生理活性 / 抗菌作用 / 抗腫瘍効果 |
研究概要 |
昨年度に引き続き、本課題における「キトサンの複合化機能性ナノ粒子」として、デンドリマー、金粒子、およびフラーレンを選択し、それらハイブリッド材料を合成し、その物理化学特性および生理機能を調べた。本年度の成果を以下にまとめた:(1)Mw=11000、脱アセチル化度96%のキトサンを使用し、メチルエステル化度を0.25とした後、世代G1、G2、G3のポリプロピレンイミンデンドリマー(PPID)とハイブリッド(CDH)合成した。CDHのヨウ素に対する錯形成能はデンドリマーの世代に依存し、G1が最も高かった。これに対応して、SAXSおよび超遠心測定より、GI-CDHのヨウ素複合体(CDHI)の分子量および回転半径が最も大きく、その構造はCDH2分子鎖が-NH_2基間の水素結合を介して会合し、ヨウ素を包接した構造をとると推測された。理論計算による予測されたモデル構造より、CDHIの凝集構造の安定性は-NH_2基間の会合力とPPIDの嵩高さの釣り合いに支配されると推定された。CDHおよびCDHI錯体の生理活性評価として、大腸菌に対する抗菌試験を行った。その結果、CDHおよびCDHI錯体とも、世代によらず抗菌作用を有するが、世代による違いは認められなかった。これには、各世代のCDH鎖あるいはCDHI錯体の凝集構造において、抗菌作用をもつ-NH_2基の有効数と配向性が起因していると考えられる。なお、CDHに比べ、CDHI錯体の方がヨウ素による抗菌作用が相乗的に加わり高い抗菌作用を有した;(2)平均粒径14nmの金ナノ粒子を二次元的に配置させた金薄膜を作成し、その上にキトサンあるいは既法に従い合成したチオール化キトサンのハイブリッドにした自己集合薄膜の構築を試みた。キトサン-金膜およびSH化キトサン-金膜の表面状態をSEMおよびAFM観察した結果、キトサンの官能基の違いによる影響はなく、両膜とも金粒子は凝集せずに、一様に配列されたままであった。また、キトサン層状膜は、AFM像によりキトサン膜および金粒子膜が何層にも重なっていく様子が観察された。キトサン、SH化キトサン、あるいはキトサン・ヨウ素錯体の薄膜における抗菌性評価を行い、両膜とも菌の増加を抑制した;(3)テトラエチレングリコール(TEG)をスペーサーとして、フラーレンとキトサンのハイブリッド化を試みた。最初にフラーレンへのTEGスペーサーの導入を行い、得られた粗生成物アザフラーレンをフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いて未反応フラーレンおよび付加数ごとに分離した。アザフラーレン1付加体を選択的分離した後、TEGを介したキトサンとフラーレンのハイブリッド合成を行った。そのハイブリッド化は、^1H-NMRおよびFT-IRの結果から確認した。フラーレン-キトサンハイブリッドはラジカルスカベンジャーの機能を有する新規医用材料として期待され、現在、抗酸化作用の評価を行っている。
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