研究課題/領域番号 |
15550155
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
坂本 寛 九州工業大学, 情報工学部, 助教授 (70309748)
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研究分担者 |
野口 正人 久留米大学, 医学部, 教授 (10124611)
東元 祐一郎 久留米大学, 医学部, 講師 (40352124)
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キーワード | ヘムオキシゲナーゼ / ヘム分解反応 / 反応中間体 / 酵素反応速度論 / NADPH-シトクロムP450還元酵素 / 電子伝達 / ストップト・フロー解析 / 活性酸素種 |
研究概要 |
ヘムオキシゲナーゼ(HO)は生理的ヘム分解を担う酵素で、基質ヘムが補酵素として機能し、酸素を活性化して自身を分解する反応(ヘム→α-ヒドロキシヘム→ベルドヘム→ビリベルジン)を触媒する。HOの生理機能として、酸化ストレスに対する生体防御機構およびCOを介する情報伝達機構への関与が注目されている。我々はこれまでにHOの結晶構造に基づき、ヘム結合による誘導適合および酸素活性化機構についてのモデルを提唱してきた。また、電子・酸素滴定法および電子スピン共鳴法を用いてHO反応中間過程における電子要求性の有無を明らかにしてきた。しかし、COが遊離する過程の電子要求性、すなわち酸素と反応するα-ヒドロキシヘムのヘム鉄の酸化状態を巡っては依然として研究者間で見解の相違がある。そこで、厳密な嫌気条件下、酸化型Fe^<3+>-および還元型Fe^<2+>-α-ヒドロキシヘム-HO複合体を調製し、酸素との反応をストップト・フロー実験により速度論的に解析した。その結果、HO複合体中のFe^<3+>-α-ヒドロキシヘムは酸素と反応して、680nmに吸収をもつFe^<3+>-ベルドヘムに転換し、この反応はFe(III)-α-ヒドロキシヘムの脱プロトン化で生じるπ-neutral radical体への酸素付加によって進行することが示唆された。一方、Fe^<2+>-α-ヒドロキシヘムでは、酸素との混合後、10ミリ秒以内に415および815nmに吸収をもつスペクトル(中間体X)に変化し、さらに400および685nmに吸収をもつFe^<2+>-ベルドヘムに変化した。この反応では、Fe^<2+>-α-ヒドロキシヘムと酸素との間に会合解離平衡が存在することから、ヘム鉄上での酸素の活性化がまず起こり、中間体Xを含むいくつかの中間体を経てベルドヘムが生成することが明らかになった。よって、今回の結果から、酸化型および還元型α-ヒドロキシヘムは、それぞれ異なる経路で酸化型および還元型ベルドヘムに転換することが判明した。ただし、HOのredox partnerであるNADPH-シトクロムP450還元酵素による還元速度は1 S^<-1>以下と遅いことを考慮すると、in vivoではFe^<3+>-α-ヒドロキシヘム→Fe^<3+>-ベルドヘムの経路のほうが優先されると考えられる。
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