研究概要 |
1.ビナフチル基含有の新規液晶化合物の相転移挙動 ビナフチル基をもつ新規なキラル化合物同族体,(R)-2,2'-bis{ω-[4-2-(2-fluoro-4-butyloxyphenyl)pyrimidine-5-yl)phenyloxy]alkyloxy}-1,1'-binaphthyl,を合成し、その相転移挙動を調べた。スペーサー原子数が偶数の時は,Iso-N^*-SmAの相系列を示したのに対し、奇数の場合はIso-BP-SmAとなった。ブルー相(BP)は通常液体(Iso)とキラルネマチック(N^*)の間のごく狭い温度領域で出現することが知られているが、本化合物ではスメクチックA(SmA)の高温側に比較的広い温度領域で出現した。フォトニック材料として注目されているブルー相の安定化のための新しい方法論となった。また,本化合物がN^*相に誘起するらせんの向きが、スペーサーが6〜9は右向きで、10〜12では左向きとなった。このようなスペーサーの違いによるらせんの向きの反転は知られていない。 2.新規λ化合物の合成とその異常な相転移挙動 3つの液晶形成基をλ型に組み込んだ新規な化合物を合成し,その相転移挙動および相構造を調べた。この化合物はSmA相の低温側の一軸性の相を示した。X線回折で層間隔に相当する3つのピークが観測され,いずれも層の法線方向であることから,この相は異なる3つの周期構造を持つ不整合なSmA(SmAinc)と同定した。 3.含フッ素U型化合物によるしきい電圧の低下 U型分子の長軸方向にフッ素を導入した新規化合物を合成し,ネマチック相の電気光学効果に及ぼす影響を調べた。このU型化合物をホスト液晶に少量添加することにより,系のΔεを大きくし,その結果,しきい電圧を顕著に低下させることができた。この成果は液晶ディスプレイにおける消費電力の低下につながるものと期待される。
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