研究概要 |
当研究室ではこれまで、フェロセン環を組み入れた新規導電性化合物の合成を検討してきたが、本研究ではフェロセン環とS原子[チアフルバレン骨格(1)とチオフェン環(2)]に注目をして新規導電性化合物の合成検討を行なった。有機導電性化合物の中で電荷移動型錯体の場合はアクセプター分子とドナー分子について構造を変化させることができるが、アクセプター分子としてはTCNQとTCNQF_6に限定し、ドナー分子としてチアフルバレン(TTF)骨格を有する化合物の合成を行なった。(1)のチアフルバレン骨格の導入はフェロセン環と置換基部分をカルボニル基で結合した化合物を合成した後で、Wittig-Horner反応を用いてカルボニルの位置でチアフルバレン骨格を導入するという方法で合成した。置換基部分としては水素,メチル基、フェニル基、ナフチル基やヘテロ環(チオフェン,フラン,ピロール等)に変え、フェロセン環に1-置換と1,1'-ジ置換した場合のTTF化合物8種類の合成に成功した。それらの電荷移動錯体を合成し導電性を測定した結果、現在までに錯体を形成していな化合物もあるが、置換基が水素の場合に1,1'-ジ置換フェロセンのTTF化合物とTCNQでの錯体が一番よい導電性を示した(0.2S/cm) (2)のチオフェン環の化合物に関しては,フェロセン環とチオフェン環の間の結合形成に関してまず検討を行なった。チオフェンのブロム化で、2-ブロモ置換体と3,4-ジプロモ置換体を作りわけ、これらについてフェロセン環と直接C-C結合で繋ぐ方法や二重結合や三重結合を導入する方法について検討を行い、パラジウム触媒を用いたHeck反応や園頭カップリングで合成できることを見出した。これらをニッケル触媒と亜鉛を用いて高分子化合物とし、その導電率測定を行なった。しかしドーピング等の検討は今後の課題である。
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