研究概要 |
本研究では、導電性化合物として(1)電荷移動型錯体を形成するタイプと(2)チオフェンオリゴマーを形成するタイプの2つについて検討を進めた。(1)は電子供与体(ドナー)と電子授与体(アクセプター)の間での電荷移動によって錯体が形成され、導電性を有するものである。TTF(テトラチアフルバレン)を基本骨格としたドナー化合物の合成を検討した。TTF母核の3,4-位でベンゼン環と結合したDB-TTFにフェロセン環を置換した化合物を合成し、アクセプターとしてテトラフロローテトラシアノキノジメタン(TCNQF_4)を用いて、その電荷移動錯体の形成を行い、8.5×10^<-7>Scm^<-1>の導電率を得た。フェロセンの存在が導電性に影響を与えることはその他の化合物合成でも確かめられているが、比較のためにフェロセン環の代りにベンゼン環を有するDB-TTF化合物の合成を行い、そのDB-TTFの数を増やした化合物を合成してそのTCNQF_4錯体の導電性との関係についても検討を行った。S原子に注目した化合物としてTTFをS架橋した化合物についても合成検討を行った。(2)は、フェロセン環を三重結合や二重結合でチオフェン環に導入する方法を検討し、そのチオフェン環を増やして物性検討を行った。さらにその電気化学的性質についてもCVスペクトルによってその電子移動の起こりやすさの検討を行い、チオフェン環の数が増えるに従って電子移動が起こりやすくなることを確かめた。
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