本年度は、主として半導体微粒子表面へのナノサイズコーティング技術の開発を行った。その結果、ZnO/SnO_2複合電極において、従来再現性に問題があったスプレー法に替わり、doctor-blade塗布法での積層法を確立し、従来法と遜色のない電池性能を得ることができた。 1)半導体微粒子表面へのナノサイズコーティング:15%SnO_2コロイド水溶液(Alfa Aesar)3ml、ZnO粉末(Aldrich)を600ml、アセチルアセトン、Toriton-X、酢酸、各1mlとMarporose 3mlを水7mlに溶かしたものを乳鉢に加え混合し、ホモジナイザーにより30分間超音波撹拌した。この溶液をスコッチテープで1.0cm×0.5cmに面積を固定したFTOガラス上に塗布し乾燥させた。その後に1時間450℃で焼結した。今回はこの塗布→乾燥を繰り返し多層化したのち最後に焼結を行う方法(Method A)と、塗布→乾燥→焼結を繰り返し多層化を行う方法(Method B)の2つの方法で実験を行った。そして色素吸着は焼結した基板をeosinYエタノール溶液(5×10^<-4>mol/l)に3時間浸すことで行った。また、対極にはPtをFTOガラスにスパッタしたものを用い、電解液は0.5M tetrapropyl ammonium iodide、0.05M I_2を体積比で2:8のacetonitril、ethylencarbonate溶液に溶解させたものを用いた。 2)多孔質ナノサイズコーティング電極を用いる色素増感太陽電池の性能評価:Method Aにより作製したセルでは、層を重ねるにつれて電流の減少が見られた。この原因は、層を重ねることによる膜厚の増加によって剥離、クラックが生じやすいためである。一方、Method Bで作製したセルでは、多層化するにつれて電流が上昇した。これは、膜厚が増加してもクラックや剥離を起こさず、色素吸着量が増えたことに起因する。しかし、3層になると電流の向上が頭打ちになった。以上の結果から、色素をEosin Yを用いる2層膜で変換効率2.2%、Ru錯体色素(N3)を用いると6%とスプレー法と同等あるいはそれ以上の値が得られた。 なお、本年度に行う予定であった電解析出法による均質コーティングの検討については、購入した電気化学的水晶振動子微量秤量装置(北斗電工(株)製)による電極重量変化のモニタリングに関する条件設定を完了した段階であり、実際の多孔質電極に対する電気化学的コーティングの検討を開始している。
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