本研究では半導体微粒子表面へのナノサイズコーティング技術の開発を行った。その結果、ZnO/SnO_2複合電極において、従来再現性に問題があったスプレー法に替わり、doctor-blade塗布法での積層法を確立し、従来法と遜色のない電池性能を得ることができた。 1.半導体微粒子表面へのナノサイズコーティング 15%SnO_2コロイド水溶液、ZnO粉末をアセチルアセトン、Toriton-X、酢酸とMarporose、水に混合し30分間超音波撹拌した。この溶液をFTOガラス上に塗布し乾燥させ、450℃で焼結した。この塗布→乾燥を繰り返し多層化を行った。この方法で作製したセルでは、多層化するにつれて光電流が上昇した。これは、膜厚が増加してもクラックや剥離を起こさず、色素吸着量を増加させることができたためである。 2.種々の酸化物半導体微粒子の組合せによる多孔質複合電極の作成 ドクターブレード法による膜の積層化法を、異なる種類の膜の積層に応用した。その結果、従来単独では光電変換効率が乏しかった酸化スズ電極でも、ZnO/SnO_2複合膜と積層することにより色素吸着量が向上し、高い光電変換効率を示すことを見出した。さらに、酸化スズ電極においてEosinY色素を吸着する際に亜鉛イオンが色素溶液に存在することで色素吸着量が大きく向上する事を新たに見いだした。 3.多孔質酸化スズ電極を用いる色素増感太陽電池の高効率化(色素吸着時の共存イオンの添加効果) 塩の添加効果の一般性を確認する目的で、様々なカチオン種、アニオン種の異なる塩についての添加効果を調べた。その結果、酢酸亜鉛などの有機酸の亜鉛塩では色素吸着量の増加分以上に開放電圧向上の効果が認められた。このことから、アニオン自体にも酸化スズ表面に吸着し、逆電子移動を抑制する働きがあるものと推測される。以上により、従来色素増感太陽電池の電極としては、低い性能しか示さなかった酸化スズ電極における、高効率化を実現することができた。
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