本年度は、(1)含セレン有機半導体の合成と有機FET素子への応用と(2)σ-π共役系ポリマーの合成とその有機EL素子への応用について重点的に研究を行なった。次にその詳細について述べる。 1.含セレン有機半導体の合成と有機FET素子への応用 セレン原子などの重カルコゲン原子を含むπ電子系化合物は、現在活発に研究されているチオフェン系化合物に比べて、分子間相互作用が強く、高移動度型有機半導体の基本骨格となることが期待される。本年度は新規オリゴセレノフェンの開発(論文1)とベンゾジセレノフェン類の開発を行なった。いずれの化合物も、優秀な有機FET素子材料であることが実証された。なかでも、ベンゾジセレノフェン類のキャリア移動度は無機のアモルファスシリコンに匹敵することが確認された(論文投稿中)。これは、有機半導体の課題である応答速度を克服したことを意味し、有機薄膜トランジスタの実用化に向けて、希望が持てる結果を得ることができた。 2.σ-π共役系ポリマーの合成とその有機EL素子への応用 σ-π共役系ポリマーを有機EL素子のホール輸送性材料として使用することを検討した。新規オリゴシラニレン-オリゴチオフェン系ポリマーの開発に成功し、有機EL素子への応用に成功した(論文2)。また、オリゴシラニレン-ピレン系のポリマーでは、光描画可能なEL素子用ホール輸送材料の開発に成功した(論文4)。これは、従来の有機EL作製法には無いまったく新しい素子作製法を可能にするものであり、注目に値する。また、これらホール輸送材料の電荷移動課程の基礎的・理論的研究もあわせて行なった(論文3)。
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