本年度は、(1)拡張型含セレンπ共役有機半導体の開発と(2)σ-π系共役低分子・高分子化合物の開発とその、EL素子、トランジスタ素子への応用と評価について研究を行った。下記に詳細について述べる。 1.拡張型含カルコゲンπ共役有機半導体の開発と有機トランジスタへの応用 昨年度まで合成してきた、種々の含カルコゲントランジスタ材料の結果より、拡張型含カルコゲンπ共役系分子が、有機トランジスタ材料として優秀であるとの分子設計指針に至った。その指針に従い、数種類の拡張型含カルコゲンπ共役化合物を合成し、有機トランジスタ材料としての性能を評価した。真空蒸着膜法を用い有機薄膜を作製した結果。最高で移動度が1.0cm^2/Vs、on/off電流比10^6と何れも昨年度の結果よりも一桁ほど高く、蒸着膜を用いた有機トランジスタとしては最高レベルの値を得ることに成功した。 2.σ-π系共役低分子・高分子化合物の開発と有機EL素子、トランジスタ素子への応用 本年度はチエニレン基をシラニレンで架橋した化合物についてトランジスタ特性を精査した。XED測定の結果よりチエニレン基、シラニレン基の数により、トランジスタ基板と分子の配向性が大きく異なり、その配向性がトランジスタ特性に大きく影響を及ぼすことが確認できた。移動度は最高で2x10^<-2>cm^2/Vsと昨年度より2-3桁ほど高い移動が得られ、この系としては最高の値を記録することに成功した。また、EL素子への応用では、PLイメージングという新しい技術に成功した。
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