研究概要 |
有機EL素子の発光材料として最近燐光体が注目されている.一重項励起子を発光に用いる蛍光体に比べて,生成の割合がそれより3倍も大きい三重項励起子を発光に用いる燐光体に高い輝度が期待されるからである.しかも,生成された励起子をすべて発光に用いることができる可能性を燐光体が含んでいるからである。有機燐光体として白金イオンが有機錯体の中心にあるPtOEP分子を用い,PtOEP発光層をもつ多層構造有機EL素子の光学特性を調べた.また,イリジウム錯体Ir(ppy)_3を発光層にもつ素子についても調べた。前者については,CBPホスト分子にドープされたPtOEP分子を発光層にもつもの(Pt2素子)と,ホストにドープしないPtOEPのみの発光層のもの(Pt5素子)との2種類の有機EL素子について実験を行った.Pt2およびPt5はPt2:ITO/α-NPD(55nm)/7wt%PtOEP:CBP(33nm)/BCP(10nm)/Alq_3(60nm)/LiF/Al.,Pt5:ITO/α-NPD(60nm)/100%PtOEP(45nm)/BAlq(20nm)/Alq_3(55nm)/LiF/Alの構造をもつ.前者のゲスト-ホスト発光層からのELでは,PtOEP分子の650nmEL発光のみが観測された.この赤色単色ELに対し,後者のゲスト-ホスト発光方式を用いない素子では650nmPtEOP発光のほかに,570nm,530nmおよび490nmEL発光が観測され,多波長EL発光(白色EL)が見られた.Pt5素子のフォトルミネッセンスやEL過渡時間反応実験から,570-490nm発光は燐光ではなく寿命の短い蛍光であり,Alq_3電子輸送層からの発光であると断定された.これはBAlq正孔阻止層を通り抜けた正孔がAlq_3層にまでしみ込んだために,PtOEP発光に加えたAlq_3発光が起ったものと考えられた.
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